先日、ようやく復活したろうか、石への関心がふたたびもたげてきたようだ。気ままに、いろいろと関心をめぐらす。
古書店で見つけた「西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇」(ティルベリのゲルウァシウス、池上俊一訳:講談社学術文庫)に、短文の章立てがあり、「月の満ち欠けにしたがう石」について、「ペルシャには、セレナイトという、その光沢が月とともに増減する石がございます」とそれだけ記している。
13世紀初に、フランスを中心に採集した奇譚集だそうだ。歴史学(アナール学派)的な資料価値とは別に、とてもそんな観点すらない私にとって、関心はもっぱら「石」についてだけであるけれど。
月は、日本人には「かぐや姫」の帰ったところ。ギリシャ神話には、月の女神「セレーネー」(ローマ神話の「ルーナ」につながる)がいるそうだ。乳白色な月は、静かに輝き、どこか切ない。
異国な香りを漂わせ、月光といった幻想味を加えて石を語るのだから、つい聞き耳を立てるというもの。セレナイトは、鉱物的には、「石膏(gypsum)」の一種で「透明石膏(セレナイト、selenite)」といい、「透明な結晶集合体」を指す。先日、筑波の「地質標本館」で見た石膏の結晶は大きく透明だった。それがSF映画かと思う巨大結晶が集合した洞窟がメキシコのナイカ鉱山にあって「クリスタル洞窟」という。(「クリスタル(結晶)」は、水晶を指すこともあるけれど)
(本ブログ関連:”結晶洞窟”)
ところで、この作者は石膏が好きなようで、「細かい粒状」の「雪花石膏(Alabaster)」についても別章で記している。「アルカディア[ギリシャ南部]の地には、いったん着火すると二度と消えない雪花石膏がございます」というのだ。あわせて、燭台で光を放つ素材や、ヘブライの香煙についても紹介している。