KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(2/11)に文化的なキーワードに基づく韓国文化シリーズの第92回として、切ない夫婦の愛と月に向かって祈願する歌にまつわるなど3曲について話を紹介した。
始めに、ドキュメンタリー映画「あなた、その川を渡らないで(님아, 그 강을 건너지 마오)」を次のように紹介された。
・ドキュメンタリー映画「あなた、その川を渡らないで」は、98歳と89歳の76年の歳月を共にした、江原道の田舎に住む老夫婦の愛と別れを描く。二人は、揃いの韓服を着て、子供のようにいたずらする。仲睦まじい二人だが、老夫は病気になり、老妻は川辺に坐って悲しむ。その姿から、監督は、「あなた、その川を渡らないで」のタイトルが浮かんだ。ここでいう川は、三途の川の意だ。映画撮影の途中、老夫は亡くなる。監督は映画制作の継続を迷ったという。この映画タイトルから、「公無渡河歌(공무도하가)」の歌が想い浮ぶ。それは、川を渡る夫を追いかけて歌う内容だ。
▼ 国楽演奏と歌による「公無渡河歌」を聴く。ベルカントな今様である。(いっそ、イ・サンウンが歌う方が・・・)
次に、「公無渡河歌」の歌の内容について次のように解説された。
・「公無渡河歌」は、夫を失った妻が歌った、古朝鮮時代の歌だ。ある日、霍里子高(곽리자고)が早朝川に出て、舟の手入れをしていたところ次を目撃する。
・白髪の狂夫が、ひさご(=瓢箪)を持って川に入った。酒に酔ったのか、或いは他に事情があったのか。男を止めようと妻が追いかけたが、到着する前に溺れてしまう。妻はその悲しみを箜篌(くご、공후)という楽器を演奏しながら、「公無渡河歌」という歌で表した。そして、自らも川に身を投げた。
▼ 箜篌演奏による「蝶になって(나비가 되어)」を聴く。てふてふと舞う。復元楽器といえど奏法は今様である。
最後に、「公無渡河歌」の伝承と、ハングルで記録された「井邑詞(정읍사)」について次のように紹介された。
・現在の箜篌は、ハープに似た音色の復元弦楽器だ。
・この「公無渡河歌」の音色はどのように伝わったのか。川で亡くなった夫妻を見た霍里子高から、この話しを知った妻の麗玉(여옥)は、夫から聞いた曲を箜篌で再現した。これら二人の女性が演奏した曲は歳月と共に忘れられ、今では楽器だけが伝わっている。
・夫婦の切ない愛を表した昔の歌に、百済時代の歌、「井邑詞」がある。韓国語で記録された最も古い歌だ。商いに出かけた夫が戻ってこず、心細くなった妻が月に向かって祈願する歌だ。
▼ 歌「お月さま、ノピゴム、ドダシャ(달하 노피곰 도다샤)」を聴く。「井邑詞」歌詞からリメイクしたという今様。
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最近、本プログラム紹介の音楽に古来の内容を持つものの、演奏や歌が本来の国楽とはいえないものが増えているような気がする。できれば、現地採集録音による民謡などを徹底的に紹介していただければと思う。KBSの録音データベースには素晴らしい宝の山があるはずだから。