学生時代に、海辺にある海洋研究所で夏合宿をした。夜になって時間を持て余していたところ、仲間の一人が「海洋生物に詳しい天皇陛下(昭和天皇)が、『アメフラシ』を食べたことがある」*と話題にした。
(*)Wikipedia: アメフラシ>食材
それじゃ、試してみようということになり、夜の磯辺に出てアメフラシを採集し、薄口の醤油で煮て食ってみた。鍋がなかったので、洗面所に置いてあった真鍮の洗面器を利用したのだが、今考えると(衛生的にも)無茶苦茶である。ゆでて縮んだアメフラシを刻んで口にすると、意外にも焦げ臭いような香りがしてコリコリする食感がした。(若いときは何でやるものだ)
アメフラシに似た生きものに「ウミウシ」がいる**。ともに海中で生活している。陸上でならナメクジにあたるもので、貝出身だが、貝殻を体内に逆転して持っている(なくしたものもいる)。人気の順でいえば、小さくて色彩豊かなウミウシは圧倒的にトップだろう。地味な色のアメフラシは寒天質風のぶよぶよした体躯から、ナメクジは湿気とあいまって登場自体が嫌われていて、ともに人気はない気がする。
(**)環境省: 磯・干潟に住んでいる生きもの紹介 アメフラシとウミウシ
https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/setonaikai/taikenikimono1-1.html
そんなアメフラシと近い関係にあるウミウシの、身体の再生能力について面白い研究があるという***(奈良女子大学人間文化総合科学研究科 博士後期課程 1 年 三藤清香(みとう・さやか)さんの研究)。
体を複数に切断しても、それぞれが元の姿に再生する「プラナリア」がいる(教科書や最近はYoutubeで目にすることができるが、たやすく見つけることはない・・・実体顕微鏡の中で見たことがあるくらい小さな生きものなのだ)。
そんなプラナリアに似た再生能力を、ウミウシが「自切(自ら切断)」後に持っているというのだから驚き。
(*** -1)産経新聞(THE SANKEI NEWS)・・・抜粋
「女子大院生のウミウシ愛 切断頭部だけで再生する生態発見」(2021.5.5 19:00)
https://www.sankei.com/life/news/210505/lif2105050002-n1.html
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・ウミウシのように、複雑な構造を持つ動物が心臓を含めた体の大部分を自ら切り落とし、再生するという発見事例はこれまで確認されていなかったという。
・その(自切)後、体部分は最長3、4カ月生存したが再生はしなかった一方、頭部分には心臓と体ができ、全身が再生した。
・今回の(実験に使った)2種(のウミウシ)は、海藻から葉緑体を取り込み、光合成をすることができるため、三藤さんは「頭部だけでも光があればエネルギーを獲得できることが関係しているのでは」と推測する。
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(*** -2)国立奈良女子大学
「光合成するウミウシで大規模な自切と再生を発見
―心臓をなくしても大丈夫。驚くべきウミウシの能力―」
http://www.nara-wu.ac.jp/nwu/news/2020news/20210309/summary.pdf
生きものって不思議だなというのが率直な感想。プラナリアと比べてウミウシはずっと大きくて複雑な体制の組織や器官を持っているはずなのに、分化する能力をどのように生体のなかで保持し続けているんだろう。