日本の代表的な鉱物標本といえば、愛媛県市之川鉱山でかつて産出した「輝安鉱」だろう。海外でも知られるその金属光沢結晶は、直線的で鋭く伸び、日本刀を思わせる。余りの美しさに鉱山労働者が気を取られるため、管理者は見つけては折ったという逸話がある。その話が本当だとしたら、なんと勿体無いことをしたのだろうと悔やまれる。喉から手が出そう。
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結晶の美しさは、六法晶系というよりアルプスで氷の化石と信じられた「水晶」に勝るものはない。釣り師の言葉に「箆鮒(へらぶな)に始まり、箆鮒に終わる」があるように、「水晶に始まり、水晶に終わる」だろうか。この石については、万人向けに一冊に特化した本があるくらいなのだから。
子どものころ、畑地や道端に「柘榴石」がいくつも転がっていて、それを互いに投げあって遊んだという話を聞いたことがある。身近にあれば当り前だったのだろう。二十四面体のこの石は、確かに投げやすそうだ。それも大粒だったというのだから、何もとうらやましい話だ。
これら水晶や柘榴石を育む火成岩の「ペグマタイト(巨晶花崗岩)」は、「緑柱石」や「鉄電気石」も産む。そんなペグマタイトが分布する福島県石川町は余りに有名。とはいえ、今では鉱物採集は厳しく制限されているという。
(本ブログ関連:”福島県石川町”)
昔、同町にある鉱物標本館に、上記の美しい鉱物(結晶)が多数陳列されているというので訪ねたことがある。下調べせずに出向いてしまったため、休館日だったという残念な経験をしてしまった。今度こそ行くぞと何度思ったことか。幸い、鉱物仲間と来月にでも見学しようという話になった。ぜひ実現したいと願っている。