KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(10/10)に、人物シリーズ49回目として、中国の二胡に似た、二弦の擦弦楽器の奚琴(해금:ヘグム)奏者、チョン・スニョン(정수년)を紹介した。
まずヘグムの紹介から始まった。
・昔、楽器を二種に大別し、弦楽器を「糸」、管楽器を「竹」と表現した。弦楽器中心の小規模室内楽を「ジュル(弦)風流(줄풍류)」、管楽器中心の場合は管楽器材料の竹(テナム、대나무)のテをとって「テ風流(대풍류)」と呼んだ。
・ヘグムは「ジュル風流」・「テ風流」共に使用されたが、ヘグムを糸でも竹でもない(弦楽器・管楽器のどちらにも属さぬ楽器)の意「非糸非竹(비사비죽)」と呼ばれた。
伝統的な弦楽器は、カヤグム(伽耶琴、가야금)」やコムンゴ(거문고)のように、爪弾いたり撥(スルテ)で音を出すものが中心だったため、弓で弦を擦(こす)るヘグムは弦楽器とみなされなかった。しかも竹製であるが、息を吹き込み音を出す管楽器でもないという訳だ。
・両方の楽器と共に演奏可能なヘグムについて、若干否定的な見方をされて来たが、現代では多くの人々に注目されている。
▼チョン・スニョンによる「その夜から明け方が来るまで(그 저녁무렵부터 새벽이 오기까지)」を聴く。ゆったりとした空気と時間が流れていく、そんな異国趣味?の漂う・・・どこまでも感傷的な美しい曲だ。
(チョ・へリョン演奏による:Youtubeに登録のSuperTheseusに感謝)
(ヘグム紹介の続き)
・この「その夜から明け方が来るまで」は、国楽室内楽団スルギドゥンのアルバムに収録された。雪が降り積もったソラク山で夜を過ごし、明け方を迎える、その美しい情景を曲の中に描いた。元々、舞踊曲だったが、その後テレビドラマの挿入歌がきっかけで話題となり、一般にヘグムが認識されるようになった。
・チョン・スニョンは、スルギドゥンで「その夜から明け方が来るまで」のヘグム演奏を担当した。
この後、ソロアルバム「공(空)」を発表。当時、国楽家たちにヘグムに対する偏見と、独奏楽器にすることへ抵抗感が少なくなかった。彼女の奏でる音色はそれまでの荒く騒がしいヘグムのイメージと違い、すっきりと落ち着いていて人々の心を揺るがす不思議な力があった。
▼チョン・スニョンによる「この世で美しいものたち(세상에서 아름다운 것들)」を聴く。新国楽というカテゴリーがあれば、その名がふさわしいだろう・・・古い皮に入った葡萄酒の香りは妖しい気がする。
・アルバム「공(空)」は、多くのヘグム奏者に影響を与え、そのことで彼女は「国楽界にヘグム革命」をもたらしたと評価されたそうだ。
次のようにチョン・スニョンのプロフィールが紹介された。
・1964年 忠清北道永同に生まれる。(イ・ソンヒと同年代)
・中学時代からヘグムを学ぶ。国立国楽高等学校、ソウル大学に進学。大学卒業後、KBS国楽管弦楽団で活動し、現在は、韓国芸術総合学校伝統芸術院で教授を務め、夫のポ・ソンジェ(パンソリ一家に生まれた国楽家)と共に国楽の伝承と普及に尽力している。
▼チョン・スニョン他による民謡「晋州遊戯(チンジュユヒ、진주유희)」をアレンジした曲を聴く。のびやかな陽射しを受けて、軽やかに歩を進む・・・そんなゆったりした気分にさせる。
(感想)
国楽人口が、大学でも多数養成されれば、かれらの行き場は拡大する。革命とか新天地(フュージョン、コラボ)が登場するかもしれないが、それも国楽のカテゴリーなのだろうか・・・もっと自由のような気がするが。