小学低学年の頃、よく遊んだ公園は大きな段差があって二段に分かれていた。公園上側は広場になっていて、ボール投げや自転車遊びをした。段を境い目に、下側を見下ろすように日陰棚があり、その両脇には階段が作られていた。公園下側も広場だったが、十分整備されてなくて次第に自然のまま茂みに変わっていた。
この茂みの奥に、子どもたちにとって秘密の水飲み場があった。公園に設置された水飲み場の水道蛇口から出る生温かい水よりも美味い、公園斜面に湧き水があったのだ。辺りは丈の高い草々に覆われていて、藪漕ぎするようにして進むと、小さな水溜りが見つかる。しゃがんで湧き出る水を手ですくって飲むそのとき、湧き口でキラキラと雲母が水流に舞っているのが見えた。夏のかんかん照りのときは、ことのほか美味しかった記憶がある。
子どもたちにとって、秘密の場所は共感しあえる場所だ。だから、近所の塀の下にある抜け道にも、猫ぐらいしか通り抜けないような家と家の隙間の陰にも、そして放置されていた防空壕跡の暗闇にも、自分たちだけが知っている秘密があった。そして、誰にも教えない秘密だぞと語り合いながら、その秘密を楽しんでいた。
今では、そんな秘密の場所もすっかり消えて、観光施設に造成されたという。でもねえ、秘密は今でも残っているし、近所の崖線で水が湧いているのを見ると、子どものときに仲間たちと持っていた秘密の迷路がどんなに大切かしみじみと思い返すよ。