ブログ本文&資料

2011年12月4日日曜日

KBS WORLD「国楽の世界へ」 朴秉千

KBS WORLD放送の「国楽の世界へ」は、先週水曜日(11/30)に、人物シリーズ4回目として珍島シッキムグッ(씻김굿)という「巫俗音楽」の芸能保有者の朴秉千(パク・ビョンチョン、박병천、1932~2007)が紹介された。

まず、「巫俗(フゾク)」についての復習から始まった。
・「巫俗」とは、巫女(みこ、ふじょ)の巫(ふ)と、俗世の俗の字を当てた韓国のシャーマニズム、または民間信仰を指す。
・巫俗音楽は、この巫俗でお祓いする際に演奏される音楽。

「シッキムグッ」について、次の説明があった。
・巫俗を司る巫堂(ムーダン、무당)という占い師が行うお祓いを「クッ/グッ(굿)」という。
・「珍島シッキムグッ」は、珍島地方に古来伝わる「グッ」で、「シッキム」は「洗い流す」の意を持ち、死んだ人の魂の不净をきれいに洗い流し、安らかにあの世に旅立てることを祈るお祓い。

▼朴秉千ほかによる、珍島シッキムグッの中から「成造経(성주경)」を聴く。リズミカルで明るく音楽的だ。ある意味、モノホニーで展開か・・・。

「巫堂」について次の通り解説が加えられた。
・巫堂は、大きく二つに分類できる。
① 神が人間の体に降臨し、神を宿した状態で巫堂となる降神巫(강신무)で、これは一般人がある日突然、神病(신병)に罹り、これを契機に巫俗界に入るというもの。韓半島中部より北の地方に多い
② 巫俗を司る家系に生まれ、代々家業を継ぐ世襲巫(세습무)という形式のもの。南部地方に多い。また、世襲のため芸術性が高く評価される。

なるほど、シャーマニズムの源流との地理的な関係(精神的な濃度勾配といえるか)からいえば、北部に降神巫が多く、南部に世襲巫が多くなるというのもうなづける気がする。ただし巫堂の創出背景が異なったまま、ずっと時代を経たということに興味を持つ。

次のように朴秉千のプロフィールが紹介された。
・1932年、全羅南道の珍島の巫堂の家系(9代目)に生まれる。
・巫俗に対する偏見を超えて、巫俗音楽を一般に広めた。

▼朴秉千による「生きる者のための祝願徳談(축원덕담)」を聴く。(先日放送(11/16)の、イ・ガンスの「祝願徳談」と比べて)随分と洗練されていて語り聞かせる感じがする。

▼朴秉千の息子パク・ファニョン(박환영)による、朴鍾基(박종기、1880-1947年)流、テグム散調(대금산조)の中から「クッコリ(국거리)」を聴く。透明な横笛の音が駆けるように響く。

(参考1) 慶應義塾アジア基層文化研究会に、「II.シッキムクッ -Japanese Edition-」の詳細な解説がある。
(参考2) Youtubeに、珍島シッキムグッの映像()が登録されている。(登録者vibahogunに感謝)
(参考3) 本部ログ関連:”金秀男写真展”(韓国文化院で済州島のクッの公演)