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2019年12月10日火曜日

「テルアビブ・オン・ファイア」

昨日(12/9)受講した市民講座「ユダヤの歴史を学ぶ(第2部)」で紹介された映画「テルアビブ・オン・ファイア」を見に渋谷まで出かけた。

映画のトーンはコメディーであり、舞台はイスラエル・エルサレム地区、パレスチナ(のラマッラーの街)にある放送局内、およびその途中にあるイスラエル軍管理の検問所だ。そして、上記舞台に生活するひとびとが、パレスチナで放送されるメロドラマ(脚本)作りに絡まっていくといったストーリー展開である。ある意味、現実世界の舞台とメロドラマの舞台が入れ子構造になっていくような気配すらする。
(コメディということについて、旧ロシア帝国末の作家チェーホフが、自身の作品を喜劇としてとらえたように・・・)

エルサレム在住のパレスチナ青年が(パレスチナ側に通う際)、検問所のイスラエル軍司令官(多分中東系のミズラヒームのよう)の発言から、メロドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」の脚本作りに絡み合うことになる。結果、メロドラマの結末をどうするかで、イスラエル側、パレスチナ側(この場合は放送関係者)に立って意見が衝突することになる。主人公の青年が最終的に打った手は果たして・・・。また、舞台の小道具に、料理「フムス」が効果的(象徴的)に使われている。いつか食べてみたい気がする(味の程は予想できないけど)。

この映画は、次のような関係を承知しているのが前提(ベスト)かもしれないけど、それら理解が不十分な私でも楽しませてもらった。
・イスラエルとパレスチナ(およびアラブ)の政治的・地理的関係
・ユダヤ人とアラブ人の多様!な民族関係
・ヘブライ語とアラビア語の関係など

ところで、映画のプログラム(冊子)に、ユダヤ学者の根本豪氏が解説した「エルサレムとラマッラーの間に」があって、イスラエル人とパレスチナ人の関係について記述がある。興味を持った部分について次に抜書きさせていただく。
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・エルサレムに住んでいるパレスチナ人は基本的には東エルサレムのIDとヨルダンのパスポートを持ち、ラマッラーのあるヨルダン川西岸地区とイスラエルの間を、検問所を通り行き来できる。その一方で、西岸に本籍があるパレスチナ人は特別な許可を得なければイスラエル側に入ることはできない。
・ヘブライ語とアラビア語は言語系統が同じセム語であり、単語の構成要素である「語根」も五分の一が共通しているという。
・イスラエル人にとってアラビア語の響きは、古代のヘブライ語を想起させるものでもある。喉から絞り出すような音の響きは東欧のアシュケナジー系のユダヤ人が失った「本当の」ヘブライ語の発音に近い。逆にアシュケナジームに憧れるミズラヒームはわざわざそれを発音しないようにすることもある。
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なお、ネット(livedoorNEWS「映画ランドNEWS」)にも根本氏の解説*が掲載されている。
(*)解説: https://news.livedoor.com/article/detail/16881991/

(「東京映画祭」記者会見: 監督およびイスラエル軍司令官役の俳優)

(Youtubeに登録の東京国際映画祭に感謝)