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2016年11月21日月曜日

君の名は

君の名は」は、子どもの頃におぼろに知ったラジオドラマだ。Wikipediaによれば<昭和27年(1952)4月10日~昭和29年(1954)4月8日、毎週木曜8時~9時までの30分放送>とのこと。番組が始まると、主な聴取者である主婦たちがラジオに耳をむけるため、夜の銭湯がガラガラになったという。子どもは当然ながら、大人向けドラマに関心はないし、銭湯の女湯がどうだったかを知るはずもない(子どもにとって銭湯は湯船を潜る遊び場だった)。

戦後、一大ブームを巻き起こしたメロドラマだったようだが、母親たちがどれほど熱中していたか知るよしもない。大人と子どもは別世界にいたのだから。それでも、子どもながらに覚えていることがある。ドラマ主題曲の始まりの詞「君の名はとたずねし人あり」、主人公の名前である「真知子」と「春樹」、ストールの巻き方である「真知子巻き」、そして主人公が再会を約束した「数寄屋橋」だろう。そのくらいでしかないけれど(子どもの遊びのネタになるようなものは何もない)。

戦争を直接体験した者が聴いたラジオ番組だった。彼ら世代より後の1.5世代から、戦争体験を別の視点で語るようになる。当事者は経験を語り、そんな中でも物語を作りあげた。一方、その1.5世代後から、(理念に基づく)現在視点で問いかけを始めた。1.5世代以降の者にとっては、このドラマは過去に埋没すべきものだったに違いなく、今、顧みられることはない。歴史は常に現在でしかない。(番組ナレーションの「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」もよく知られる)

(きれいな昭和のことばで演じられる)

(Youtubeに登録の山本嗣信に感謝)

戦争の後に、ロンドンの橋で再会を約束した米映画「哀愁(Waterloo Bridge)」がある。こちらは、「君の名は」のオリジナルに当たるだそうだが、なんだか主人公の思い出作りの気がしてならない。空襲を体験したイギリス人だったら、こうは作らないのではないかと思ったりする。


(Youtubeに登録のDarkLadyUK”に感謝)