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2011年6月12日日曜日

玄翁(げんのう)

イ・ソンヒがテーマ曲を歌う、SBSの<ファンタジック&ロマンティック・ラブコメディ>「僕のガールフレンドは九尾狐」に登場する九尾狐(クミホ)は、可愛らしい無垢な存在(ミホ)に描かれている。(現在、DVDで6話まで視聴)

日本の伝説の九尾狐は、鳥羽上皇から寵愛をうけた絶世の美女玉藻前(たまものまえ)に化身するものの、陰陽師安倍泰成(安倍晴明浄瑠璃で母親が狐であったとされる)に、その正体を暴かれる。追われた玉藻前は哀れ殺生石(せっしょうせき)となるが、最後に玄翁(げんのう)和尚にその身を砕かれる。

この物語を、青空文庫の「殺生石」(楠山正雄、児童文学者)で読むことができる。

ある秋の夜、下野(しもつけ)那須野の原に野宿する玄翁和尚をかすかに呼ぶ声があった。すると、背丈ほどの石(殺生石)のそばに玉藻前が立っていた。おのが身の犯した罪を語り始め、涙をはらはらとこぼして法力で魂の救いを願った。

「(翌朝、願いを請けた)玄翁は殺生石の前に座って、熱心にお経を読みました。そして殺生石の霊をまつってやりました。殺生石がかすかに動いたようでした。
 やがてお経がすむと、玄翁は立ち上がって、呪文を唱えながら、持っていたつえで三度石をうちました。すると静かに石は真ん中から二つにわれて、やがて霜柱がくずれるように、ぐさぐさといくつかに小さくわれていきました。」

話し変わって、一家に一つはある金槌(かなづち)で、頭部両端が平らなものを「玄翁」という。上記の伝説からきたといわれている。(昔、仏僧に、土木、鉱山などの技術に長けたものたちがいたようだ)

ちなみに、鉱物に「玄翁石(いし)」があるが殺生石と関係なく、図鑑「日本の鉱物」(成美堂出版)によれば、フォッサマグナより東の第三紀中新世の泥岩中からみつかる不純な方解石(炭酸カルシウム)に置き換わった「仮晶」で、形が玄翁(金槌)に似ていることから名付けられたようだ。

(本ブログ関連:”殺生石”)
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