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2010年1月12日火曜日

カルミナ・ブラーナ

中央線の中野駅だったと記憶している。北口を出て線路沿いに、目指す個人経営のレコード屋があった。夏の日だったのだろうか、映画のように光景が浮かぶ分、記憶が怪しいが先に進める。入り口が木枠の透明ガラス戸で、まるで下町にある民家の玄関のようだった。小さな店構えで、申し訳程度にレコードが置かれていた。

多分友人からの情報だったのだろう、おもしろいレコードを売っている隠れ家みたいな店があるというのだ。事前に調べたレコードを頼むと、日を指定して渡してくれるのだ。しかも値引きまでするというのだから、高校生には願ってもない話である。

そんなわけで、ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスという長い名前の指揮者による、世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」(AA-9256 Angelレコード 東芝音楽工業)を入手した。「第21回芸術祭参加作品」だからでもないだろうが、レコードはボックス型ケースに収められ、充実した解説と歌詞の冊子がセットされた凄い力の入れようだ。

この曲はFM放送で聞いたのだろうか、こんな曲があるのかと驚き知ったわけだ。もっと驚いたのは、家の小さなレコードプレーヤーから、今までのどんなレコードよりも迫力と鮮明な音色が響いてきたことだ。あわてて友人に頼んで、上等なステレオ装置で聞き直したりもした。

中世という混沌としたなかで、したたかに逞しく生きた大衆の、何でもありの響きがした。時代は違うがヴィヨンの詩を少し齧ったせいか、聖なるものを打ち負かし、滑稽にあざ笑う痛快さも感じられた。世俗は変わらない、一番くだらないが一番正しい生き方をしていると、そのことをこのレコードは教えてくれた。

そうそう、この曲も市民合唱団によく歌われている。

★★★★★ 孫が首を横に振って初めてイヤイヤしたというメールが届いた ★★★★★