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2020年10月27日火曜日

絵本「ちいさなタグボートのバラード」

現代ロシアの裏社会を代表するマXxXの起源は「ブラトノイ」と呼ばれ、その中にいわゆる「無頼派」として、今なおロシア人のこころを揺する詩人「セルゲイ・エセーニン」(1895年10月3日~1925年12月27日)がいた。ロシア文学について全く不案内にもかかわらず、このブログに感想を記した。

(本ブログ関連:”ブラトノイ”、”エセーニン”)

詩人が生まれた国で現在出版される詩集の装丁を見ると、読者の心性が浮かんでくることがある。とりわけ若い女性の読者は詩人に純粋さを夢見るようで、それを感じた編集者はくすぐるような挿絵を詩集に刷り込んだりする。それは洋の東西をとわない。

時代においては、詩人は言葉だけでなく生き方まで象徴的になる。しかし時代が固着してしまうと、詩人の中には派手に立ち回ることもせず、社会に寄生するだけの存在としてあしらわれ、胡散臭い「徒食者」の烙印を押される。
1960年代以降のソ連社会はいろいろなものが見え始めたようで、目障りな者への風当たりが強くなってきたのだろう。ユダヤ系の詩人「ヨシフ・ブロツキー」(Ио́сиф Бро́дский、Joseph Brodsky、1940年5月24日 ~1996年1月28日)も若いころ徒食者扱いされたという。

彼が初めて(1962年)書いた詩が、いまでは絵本「ちいさなタグボートのバラード」(ヨシフ・ブロツキー詩、イーゴリ・オレイニコフ絵、沼野恭子訳)となって手にすることができる。まことに美しい絵本に仕上がっている。
大型の絵本サイズに描かれた表現は穏やかで読者を安定させる。そして詩は、タグボートの「ぼく」を通して語られる。港にいるだけの「ぼく」にとって、海は遠くにあって、大型船もあこがれの存在でしかない、それらはいつかは去っていくのだから。そんな「ぼく」はタグボートの役目をしっかり果たすだけ。そして・・・。

(参考)原詩露・英対訳 Andrey Kneller氏による。 ← ロシア語はわかりません。
https://sites.google.com/site/poetryandtranslations/joseph-brodsky/a-ballad-about-a-small-tugboat

ところで時代は違うけど、機関車を黒い馬に例えたり(エセーニン)、クレーンの光景をレース模様に例えたり(ブロツキー)するのを見て、ソ連だなあとつくづく思ったりして。

ブロツキーは、アメリカに移って活躍した詩人で、作品は難解といわれる・・・未読。

(参考)北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターデータベース: ブロツキーの解説
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/literature/brodskii.html

昨日(10/26)、この「ちいさなタグボートのバラード」の絵本を購入した。

(追記)
Youtubeに、上記とは別グループ*による、360°フォーマット展開(画面上、マウスを使ってタグボートを追ったり/フルスクリーンにすると拡大・縮小することが)できる、アニメ「ちいさなタグボートのバラード(Баллада о маленьком буксир)」が登録されているので次に埋め込む。
(*)Youtubeに戻って、画面下の解説に、サンクトペテルブルグの制作陣が記されている。

(Youtubeに登録のWHALETALESに感謝)