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2020年1月18日土曜日

2020年最初の庚申

「陰陽五行」の5種と「干支(えと)」の12種の組み合わせは60通りとなり、一年の中でそれぞれ6回巡ってくる。今年の「庚」と「申」の組み合わせ「庚申」の日は次の通りで、きょうが最初の日になる。

(本ブログ関連:”庚申”)

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今晩、寝ている間に、人の体に棲む「三尸(さんし)の虫」が、「天帝」または「閻魔大王」に、日頃の行ないを報告する「庚申信仰」がある。昔のひとは、三尸の告げ口を防ぐため、一晩中酔い明かす宴を催したという。

人は体の中に虫を飼っているようで、「腹の虫がおさまらない」、「虫が好かない」、「虫がよすぎる」といった拒絶的な心を代弁させるようだ。そんな虫なので、たちが悪そう。

「聊斎志異」(浦松齢作、立間祥介編訳、岩波文庫)の「五五 酒の精 - 酒虫(しゅちゅう)」にも、赤い虫が登場する。長山県(山東省鄒平(すうへい))の劉なにがしが経験した次のような話だ。(抜粋)
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多くの田畑を持った素封家で大酒飲みの劉は、たまたま異人の僧と出会い、何かおかしなところはないかとたずねられる。
いくら飲んでも酔わないと応えたところ、それは「酒虫」のせいと指摘される。
僧は虫を吐き出さすため、劉を俯(うつぶ)せに寝かせて手足を縛りつけ、顔の先三尺ばかりにうまい酒を入れた椀を置いた。喉が渇いて苦しむ劉の口から、ついに長さ三寸ばかりの赤い「酒虫」が飛び出した。
劉は、感謝とともに礼金を出そうとしたが、僧はむしろ「酒虫」を貰い受けるだけだった。
僧は「これは酒の精で、これを水を入れた甕(かめ)に入れてかき回せば、うまい酒になるのです」といった。試してみると、その通りだった。
以来、劉は酒を敵のように憎むようになったが、そのうち次第に痩せ細り、家も日毎に貧しくなって、三度の飯にも事欠くようになった。
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芥川龍之介の短編にこれを題材にした「酒虫」(青空文庫*)がある。物語の終わりに、「酒虫」が主人公の劉にとって一体何だったのか自問する。福だったのか、病だったのか、それとも劉そのものだったのではないかと。
(*) https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/161_15133.html

虫が、否定的な存在としての「病」だけでなく、素封家につながる「福」という考え方を示しているが、さらに近代風に自分自身というとらえ方もしている。

私は、原典の聊斎志異の世界に棲む異形(いぎょう)なものといった感しか思いおよばないのだが。