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2015年3月24日火曜日

蟻と空

今日の蟻(アリ)の親方は機嫌がいい、旅の思い出語りをした。

労働者諸君、いや、それじゃあ寅さんと同じだな。お前ら働き者たちよ、巣にいるときゃ、暗い一本道の穴ん中、上へ下へと伸びても、しょせん一本道。

じきに、お天道様が暖めてくれりゃ、上の世界に出るわけよ。そこは、歩いて這って知る地べた。いつまで行っても、まっ平らなところよ。隊列からはぐれるなよ。

でも、草木があれば蜜を吸いに登って行くことになる、ありがたいところさ。ところで知ってるかい、どこまで行ってもまっ平らな世界。砂漠(サバク)よ、熱くって水もない、そんなところに棲んでいるのがいる。お天道さまの光が頼りよ、初めに光だ。

あそこは、在るか無いかの厳しい世界。二項対立っていうか、二元論の世界よ。情け容赦もない。それに比べりゃ、おれたちには、草も木もある、山もある、それに海まである。おまけに時間もあって四季がある。おかげで冬ごもりもあらあな。大事なことだ。

おれたちゃ、幸運な世界に棲んでいる。何でもかんでも割り切れない世界よ。だからありがたいのさ。これも神様の思し召し。もうじき温もって、外に出て仕事だ、うんと働けよ。

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