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2014年1月4日土曜日

魯迅の「お長と山海経」

魯迅の短編「お長と山海経」(藤井省三訳、光文社古典新訳文庫)に登場する「お長(阿長)」は、まるで漱石の「坊っちゃん」の下女(養育係り)の「清」のように、主人公の世話をする。「坊っちゃん」の明治気質の清と違って、「お長と山海経」のお長は頑固さや狡さがあり、そして適当さもあわせ持っていているが、人間味のある彼女と主人公(僕)との距離感は返って近いようにも見える。

「お長と山海経」の主人公は、大叔父の影響もあって、彼から聞いた絵入りの中国古代の地理書である「山海経」が欲しくなり、新年のお年玉としてお長にそれを求めた。後日、お長は実家からの帰りがけに、木版色刷りの「山海経」四冊を買ってきてプレゼントしてくれたのだ。

「ページをめくれば、たしかに人面の獣、九頭の蛇、一本足の牛がおり、袋のような帝紅鳥、頭がなくて『乳を目とし、臍(へそ)を口とし』、さらに『干戚(たてとおの)を執って舞う』刑天がいるのだ。」という、粗末な色刷りだが、その図は少年の空想を膨らませるに十分なお宝となった。

(本ブログ関連:”山海経”)

イ・ソンヒの歌「狐の嫁入り(여우비)」がOSTである、SBSのロマンチック・コメディ「僕のガールフレンドは九尾狐」の主人公「九尾狐」について、その起源を記した「山海経」に関心がますます深まる。魯迅が幼い頃に見たであろう、子供向け色刷りの「山海経」の四冊(「南山経」、「大荒東経」、「東山経」、「海外東経」)を、実際に手にとって見てみたいと思う。

(本ブログ関連:”狐の嫁入り”)