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2014年6月15日日曜日

ホキ美術館

FIFAワールドカップ「日本対コートジボワール戦」がおこなわれている丁度そのとき、有楽町マリオンにいた。実は朝日ホールで、日本では珍しい写実画専門の美術館である「ホキ美術館」の紹介を兼ねて、四人の画家たちの作品投影と、写実画家としての”本音”トークを聴く機会があった。

以前、クロッキー帳に、絵画集や雑誌写真などから、自分好みのものを毎日鉛筆で描き続けたことがある。15冊ほどになったけれど、転居したタイミングで、その習慣が薄れてしまった。今は、それをときたま懐かしく見ることがある。

(本ブログ関連:”絵画”)

素人がする模写の真似事だったが、丁寧に観察すればするほど、一日では描ききれない。そして、書き始めて気付いたことがある。北方ルネッサンス絵画に見られる、例えば聖母子像の聖母の衣装の襞などは、それ自体に意味があるように巧みに陰影をもって折れている。その執拗さを、たしかホイジンガだったか指摘していたと思うが、空間をそのままに何もないことへの恐怖があるという、ゴシック的な執拗さだ。

まあ、そんな大それた意識があった分けではないけれど、空間を細密に描く写実の世界に触れてみたかった。幸い、講演会場から、千葉の土気にある美術館までバスで運んでくれたのだ。

ホキ美術館は、スマートで近代的な佇まいをした個人美術館である。洒落た建築物の中に、講演会に出席された以外の画家たちの作品も多数展示されていて、十分に時間をかけて鑑賞できた。

作品の一つ一つ、作者の筆致が感じられ、題材を包む空気まで伝わってくるような気がした。一体どんな絵の具と筆を使い、どのような筆使いなのだろう。特に、展示作品のなかで、森本介という画家の、セピア色の絵に吸い込まれた。穏やかな世界が描かれた、(キャンバス自体が東日本大震災を経験したという)少女像の≪未来≫は、光が時間が未来へ流れていくことを気付かせるようだ。見えるものを見えるまま素直に、画家の視線に沿って、描かれた世界に心安らぐ気がする。画家の視線に遊ばせてもらった気がする。

電車で行くには大変かもしれないが、この美術館へまた行きたいと思っている。