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2014年3月14日金曜日

スーパージャイアンツ

子どもの頃に住んでいた社宅の近くに、小さな映画館が2館あって、それぞれ大人向け日本映画を2本立てで上映していた。ときどき親父に連れられて行ったが、怪談映画を見たときの恐怖を忘れられず、閉口した記憶がある。おかげで、夜の井戸端が怖くて近寄れなかった。

それとは別に、父の勤める会社が直営する映画館が遠く離れた工場敷地にあった。子ども向けの映画があるときはよく見に行ったものだ。教育映画、ディズニー映画など健全なものを、駄菓子代にもならぬ安い値段で見せてくれた。
テレビが登場する以前だから、子どもにとって大きな楽しみだった。それにしても、社宅から離れた場所にある会社の映画館に、親は子どもたちだけで勝手によく行かせたものだ。のんびりした安全な時代だった。

そんな頃、会社の映画館も子どもの期待も受けて、「ゴジラ」や「スーパージャイアンツ」など上映するようになった。「ゴジラ」の足が街の中を踏み潰しながら迫って来る光景は今もしっかり目に焼きついている。幽霊よりも怖かった。モノクロ映像は、ゴジラの睨むように見下ろす眼光の鋭さを際立たせた。そのまま、夢の世界に登場してくるのに十分だった。

「スーパージャイアンツ」は、後のテレビ時代を先取りするもので、悪と戦い地球の危機を救ってくれる、わくわく感のある正義が勝利する勧善懲悪のSF映画だ。主人公のスーパージャイアンツは、映画館で皆と共有できるヒーローだった。それは大事なことだ。テレビのヒーローには、居間(家族だけ)で見るため共有感が乏しくなる。

同じモノクロであるが、「ゴジラ」の覆いつくすような暗影の恐怖感と違って、「スーパージャイアンツ」は、ヒーローの白い衣装に合って、安心感というか何処かほのぼのした雰囲気が印象的だった。なにより、ユニークなタイツ姿が目に残っている。

ヒーローであるスーパージャイアンツを演じたのが宇津井健だった。その後、映画やテレビドラマに登場して、髪を揺らしながら熱演されるのを見るたび、なぜかスーパージャイアンツの英姿を思い出したものだ。
その宇津井健が本夕、82歳の天寿を全うされた。忘れられない銀幕のスターの一人だった。