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2013年12月17日火曜日

KBS WORLD「国楽の世界へ」 逐鬼

KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(12/11)に文化的なキーワードに基づく韓国文化シリーズの第35回として、”鬼払い”の「逐鬼(축귀)」にまつわる話を紹介した。

まず、(異人、あるいは巫俗信仰とつながるという)処容(처용)の説話から次のように始まった。
新羅(356年~935年)の憲康王(헌강왕)は、879年のある日、蔚山の開雲浦(울산 개운포)を訪れた。突然、空に雲が陰り、深い霧がたちこめ、天地は真っ暗になった。天の様を伺った臣下が「東海の竜王(용왕)の仕業ですので、何か早めに手を打たなければなりません。」と進言した。王は竜のため寺を立てるよう命じた。
・王の恩恵に感謝した竜王は、7人の息子を連れて現れ、王の功績を称える舞を舞った。7人の息子の一人、処容は、憲康王に従い官職に就く。そして美しい妻も娶り、夜には通りで歌や踊りを楽しんだ。ある日、家に帰ったところ、伝染病の疫神(역신)が妻と寝ているのを目撃した。疫神を懲らしめるのではなく、状況を歌詞に込めて歌い踊った。疫神は、処容の大胆さと寛大さに驚き、跪き侘びて、今後現れぬと誓った。以来、人々は鬼払いの神として処容の顔の絵を門に貼った。

▼「処容歌(처용가)」を聴く。明るい月夜に遊ぶ・・・鄕歌(향가)の流れを汲むという・・・現代曲風、今様である。

・宮中にも処容の噂は広がり、祝い事や大晦日などに彼の舞を舞って様々な鬼払いをしたという。

次に、巫俗信仰などに見る鬼払いについて次のように説明があった。
・昔の人々は、出来事は全て神や鬼と関連すると考えた。良いことは先祖の助けと感謝し、悪いことは鬼の仕業と考えた。自然に対する理解は別にして、道理に逆らうことなく、自然と共に生きる慎み深さが感じられる。鬼払いは、一年の終わりや、災いがあったときなどに行なった。命に関わる重要なときは(巫俗信仰の)「クッ(굿)」の祓いが多いが、さほど重大でないときは盲人や僧侶などを呼んで経を上げたりした。

▼西道(서도)地方で盲人僧が読んだ「罷経(파경)」を聴く。飾りのない素朴な感じする祈りの歌だ。

最後に、固有の鬼である独脚鬼(トケビ、도깨비)について次のように解説された。
・未婚の男女、男やもめ、寡婦などの霊や、かんばつや長雨の被害を受けて亡くなった人たちの霊など、様々な霊を列挙し、わずかばかりの慰霊の儀式を行って、彼らの世界へ帰るようにする。
・霊の中に、独脚があり、人間の魂や幽霊と違い、日常に使用しては捨てる火箸や箒、古くなった家具などが変化したものとされる。いたずらな性格で、人を見ると相撲をしようとせがんだり、災難を起こしたりするが、共に仲良く過ごせば金銀財宝をもたらすという。韓国では、「独脚のいたずらのようだ」といった慣用句もある。隣さんのような存在と捉えた昔の人々の優しい心遣いが感じられる。

▼「山独脚鬼(산도깨비)」を聴く。独脚鬼とばったり出会って・・・今様ながらどこか長閑な感じする。(この曲、中学教科書にも載ったという)