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2013年6月14日金曜日

アジサイ

梅雨の「アジサイ」(アジサイ科アジサイ属)は、当たり前の花だ。子どものころから、何処へ行っても身近な花のため、特に知ろうともしない平凡な存在だった。
今でも、ご近所を巡ると、垣根越しにアジサイの青紫の様々なグラディエーションを持った花弁(実は萼【がく】)が覗かれる。もし見過ごしたとしても、気に留めないだろうな・・・だって雨が降れば必ず、何処からかその姿をぽっかりと浮ばせるのだから。

アジサイの漢字名は、色貴やかな色彩に合う「紫陽花」が代表的であるが、その色の変化(へんげ)から別名「八仙花」ともいう。韓国では「水菊(수국)」の名があてられているが、見るからに菊の姿をしている日本の「水菊(ミズギク)」とは異なる。

ところで、アジサイの花で有名な紫陽花寺の名月院が鎌倉にある。祖母が、わざわざ田舎から来て、能の「鉢の木」で知られる鎌倉幕府の第5代執権北条時頼の墓へ参ったのがおよそ40年ほど前のことだろうか。当時も紫陽花寺として知られた名所であった。ところで、名月院の紫陽花が、昔からのものでないことを祖母から聞かされた記憶がある。

紫陽花を名所にするものが各地にあるが、名月院は、わたしの知る限り初期のような気がする。当たり前の花から、愛でる花に変わったように、時代がゆとりを持ち始めていたのだろう。

五、六年前のこと、この時期に同寺を訪れたことがある。紫陽花の名の穏やかな響きに魅かれてか、多くの観光客が訪れて列をなしていた思い出がある。