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2012年11月16日金曜日

(資料)「母をお願い」の中で母がうたう歌 (続)

先日登録した「(資料)『母をお願い』の中で母がうたう歌」の続編として次の歌を記す。
申京淑著「母をお願い」(安宇植訳、集英社文庫)の三章で、妻について何一つ思い遣りをかけなかった夫(「あんた」)が、やがて妻が「愛とは何かと訊かれたら」で始まるうたを歌っていたことを思い出す。
ソン・テグァン(宋大琯、송대관)の歌に「愛とは何かと訊かれたら(사랑이 무어냐)」(作詞:ソン・テグァン作曲:チェ・チョンファン)があるようだが、このことだろうか。ただしYoutubeで聞くことができないのが残念。

(本ブログ関連:"(資料)「母をお願い」の中で母がうたう歌")


さて今晩、韓国文化院で、韓国文学翻訳院「東京フォーラム」が催され、「母をお願い」の著者申京淑(シン・ギョンスク、신경숙)と日本側の作家島田雅彦の両氏による対談があった。フォーラムの最後に、この作品の成立について著者が次のように語っていたので記す。
・2年越しに、新しい作品を書きながら手をつけた、300ページ程度の作品だった。
・ただし、機が熟してないと感じていたとき、出だしの「お母さん(オンマ)の行方がわからなくなって一週間目だ」が浮かんだ。こうすることで、いろいろな可能性を棄て、同時に展開と整理ができた。

この作品の「作者あとがき」に、「連載を終えてからも苦心の末に、オンマを生き返らせるためにエピローグ『バラのロザリオ』編を書き上げた」と記している。「連載」とはエピローグ以前の一章から四章を指しているのだろう。

作品は、北京オリンピック前年(2007年)の夏の土曜日に、地下鉄ソウル駅で夫とはぐれた母親に密接な肉親をそれぞれの章において語る。作者は、一章では作家の長女を「あなた」といい、二章では長兄を「彼」といい、三章では夫を「あんた」 といい、四章では母親自身を「あたし」、次女を「あんた」という。しかも同じ四章で貧しい頃に母親が出会った「あんた」までもが登場する。

しかも、四章で母親が学生時代の次女と行動を共にしたり、土俗的世界が混在したりするあたりから、エピローグでバチカンにあるピエタ像に母親を重ねるまでの表現は難解だ・・・文学はやっぱり難しい。

(本ブログ関連:"申京淑")