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2010年1月22日金曜日

イカロス

中学時代、教壇から見て教室の後ろ側の席に座っていた。授業に気乗りしなくなると、図書室から1巻ずつ借りていた美術全集本を取り出しては、膝の上に載せて隠れるように眺めていた。お気に入りは、北方ルネッサンスの巻だった。

代表的な画家ファン・エイク(兄弟)やデューラーは、その正統さに好奇心をくすぐられることはなかった。もっぱら奇妙な画風の画家にひかれたものだ。ボッシュからブリューゲルと、グリューネバルトあたりだった。(もちろん、デューラーの銅版画「メランコリア」には、好奇心を傾けた)
また同美術本に写真で納められた、ドイツ教会彫刻(木彫)の執拗な細密さに驚嘆した。

特に興味を持ったのは、ピーター・ブリューゲル(父)だった。ボッシュの系譜の怪奇な要素と、風刺の効いた庶民の諧謔さの要素に、もっぱら関心が向いた。絵画の中に配置された、ひとこまひとこまを謎解きのように楽しみ見るだけで、授業の退屈さから逃れることができた。
当時、ブリューゲルに「農民画家」という感想を思い浮かべることはなかった。 (むかし「農民画家」といわれたことと、庶民史に通じた現在の「農民画家」の解釈は当然異なるだろう)

後に、ポスターサイズの写真や絵画が流行った時期に、ブリューゲルの作品「農家の婚礼」と「農民の踊り」の印刷物を購入して部屋に飾ったりもした。
また最近では、彼の絵は図象学に囚われているようで、近寄りがたい画家になってしまった。反面、市民講座では人気の画家である。

ブリューゲルの作品に「イカロスの墜落のある風景」がある。<ロウ>で固めた羽をつけたイカロスが上空に飛び、太陽の熱で<ロウ>が溶けて海に墜落したギリシャ神話を題材にしている。その絵は、イカロスがどこにいるのかと探すほどにドラマチックではない。作画同時代の日常風景が(意味を持たせているのだろうが)描かれている。

ところで、宇宙航空開発機構(JAXA)が本年度打ち上げ予定の小型ソーラ電力セイル実証機を「IKAROS(イカロス)」と命名している。太陽の光を受けて、金星軌道に向かって宇宙を航海するというが、神話の通り太陽の方向に近づいていくのだ。この実証機イカロスへのメッセージを公募しているが・・・。

★★★★★ 孫がテレビCMに夢中になり母親の呼びかけに一顧だにしない動画が届いた ★★★★★