中学校の音楽教室は校舎の2階奥にあって、ブラスバンド部員は出入り自由だった。放課後、戸棚にあったドミートリ・ショスタコーヴィチの「森の歌(Song of the Forests)、Op.81」(オラトリオ)のLPレコードを取り出しては聴き入った。つまり、はまってしまったのだ。
ジャケットには、鬱蒼とした樹林が描かれていた。インターネットで探したところ、それはVanguard(
VRS-422 )のLPレコードだったと思う。(指揮:ユージン(エフゲニー)・ムラヴィンスキー)
ロシア語の歌詞もわからなければ、歴史的(政治的)背景も知る由もない。ただ、オーケストラと次々湧き出るような合唱の旋律と響きを楽しんだ。実に心地よかったのだ。
それだからか、この「森の歌」は、当時もそうだが今でも市民合唱団の曲目に入っているという(それも日本だけのようだが)。
もう一度聴きたいと、前のことであるが、ヴラディーミル・アシュケナージによるCDの「森の歌」(LONDON
POCL-5263)を入手した。指揮者の解釈や演奏について語ることは一切ない。ただ、懐かしい町に戻ったときに感じる、思い出と現実の違いに似た戸惑いを覚えた。歳をとるというのは、そういうことなのだろう。
ところでWikipediaによれば、ショスタコーヴィチ自ら「森の歌」を
オラトリオと位置づけたとのこと。