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2010年10月14日木曜日

五百円札

以前、息子夫婦が上野駅に行ったところ、いわゆるイメージとは違って、洒落た構内だったという。昔、わたしも通勤帰りに上野駅をしばしば利用したことがあるが、当時も改装が進んでいた。リニューアルに随分時間をかけたのだろう。
ただし、駅ガード下から入る地下道には、映画「男はつらいよ」の場面を彷彿させる一角がある。そこには、昭和の臭いがそのままに残っている小さな食堂があった。いつものように啖呵を切って柴又を飛び出した寅さんを、追ってきた妹さくらが、別れに五百円札を渡す場面を思い出す。岩倉具視の青いしわくちゃな五百円札を、さくらが手で伸ばしながら、寅さんの手に握らせたのだ。それは、妹の生活のなかから捻出したものだった。一瞬見えた、その場面を今も忘れられない。
(記憶違いがあったら容赦を)

そんな思い出の場所が、今も残っているはずと話したが、五百円の価値が余りにも小さくなっていることにとまどった。五百円札はとうに消えて「ワンコイン」となって、不景気の今、サラリーマンの昼食1回にしか相当しない時代になった。